自分を産んでくれた人に、自分が生まれたときに何を思ったのか聞いたことある人ってどれくらいいるんだろう。
さぞ感動的で、何かじわぁとくる言葉をくれるに違いない。
感動的…感動的…?
いや、私は違った。それを求めていた私が悪かった。
私が親から聞いたのは私が「インスタントラーメンみたいだった」という感動も何もない一言だった。
信じられないほどの痛みに見舞われ、散々な思いをして産んだ子にインスタントラーメンはいくらか面白すぎる。
しっくりきていない人たちに説明すると、つまり生まれたての私の髪の毛がインスタントラーメンのように縮れている様子を見てそう思ったらしい。なにそれ。
確か、数年前にその言葉が本当にしっくりくるかどうか確かめたくて
私が生まれた瞬間のビデオを見せてもらったことがある。
カチッとビデオテープを入れ、テレビに映し出される画面を見つめる。
あっでてきた、うわ、すご…
………インスタントラーメンだ
もうまさしくそれだった。全然インスタントラーメンだった。
信じたくないと思ったが、信じるしかなかった。オカアサン、ホントダネ。
インスタントラーメンじみた私はさておき、確かそのビデオを見てなんかわからないけど幼いながらに涙目になったことを覚えている。自分が誕生した瞬間をみたとき、それまで自分が過ごしてきた時間がフラッシュバックしたような感じがしたのも覚えている。
こういう、生まれた瞬間の話って、してるようでしてないと思う。
小さいころの写真はあるけど、みたいな。もしビデオや写真が残ってたら、自分が誕生した瞬間を自分がどう感じるのか、一回確かめてみるのもいいのかもしれない。
もしかすると、あの時ビデオを見た感覚と、今ビデオを見る感覚は違うのかもしれないし、少し楽しみでもあり怖くもある。
あとは、私が「インスタントラーメンみたいだ」と、まだこの世に存在しない誰かに思う瞬間は訪れるのだろうか。
まだわからないけど、きっと私も自分の子にそう思ったりするんだろうか。